今回は就農するにあたっての資金についてです。
この質問はよくされるのですが、いくら用意すれば十分という金額を
あげるのは難しいです。
最近は国や県、市町村が就農のための資金を貸与・支給してくれる
ような制度が充実してきましたが、それでも手持ちの資金がほとんど
ないという状態での就農は不可能です。
準備資金は多ければ多いほどよいですが、①農業を始めるにあたって
最低限必要な道具を購入する費用、②作物を生産するための1年間の
運転資金、③仮に予想していた収入が得られなかった場合の生活資金
くらいは用意していたほうが良いでしょう。
①は自分の場合だと、軽トラック、動力噴霧器、500リットルのタンク
背負い式動力噴霧器、草刈機、苺を冷やすための保冷庫などが必要でした。
軽トラや保冷庫は中古で探し、タンクは古くて使わなくなったものを
譲ってもらったりして全部で80万円くらいかかりました。
また、農業は作付してから収入が得られるまで、時間がかかりますし、
作物が出荷できるようになるまでに、農薬や肥料、ビニールやマルチ、
段ボールやパックといった出荷資材、ハウスを加温するための重油などを
先に購入しなければなりません。
②はそのための運転資金です。買掛といって購入した商品の支払いを年末や
年度末にまとめてしてくれる業者さんもあるので、農産物の販売収入が順調
に入ってくれば、買掛の支払い時期にうまく充当できる場合もあります。
これをあてにして、収入が予想通りに入ってこないと恐ろしいことに
なりますが・・・。
苺を作っている私の場合、300坪のハウスで必要な運転資金は250万円
くらいです。
③は病害虫や技術的な未熟さだけでなく、天災などによる被害のリスクもあり
ます。私の場合、1年間は家族を養えるようにと考えて、準備しました。
これは、人それぞれ違うでしょうが、私は会社を退職するときに、それまでの
生活で必要だった支出をすべてリストアップして必要最低限の支出となるようにし、
保険などもすべて見直しました。
そして、農業をはじめるうえで、一番重要な農地と施設についてですが、
私の場合、苺農家の空きハウスをそのまま譲っていただき、農地は現在も
貸していただいています。ハウスと一緒に苺栽培に必要な道具類もすべて
一緒にゆずってもらいました。こういうちょっとした諸材料もひとつ
ひとつ新たに購入するとなるとかなりの額になるので、自分が作りたい
作物を栽培している農家の方がやめられたときにそのハウスと栽培に
必要な道具類をそのまま利用させてもらうのが一番よいと思います。
とくに農地にはよしあしがありますので、いきなり購入してあとから、
あまりよくない農地だったとわかっても、どうしようもありません。
とりあえずは農地は借りて、栽培してみましょう。
どういった農地が良いのかということもわかってきますし、農家仲間から
いろいろな情報もはいってくると思います。
そして、施設や機械等の購入には借入金や公的な補助制度を利用
するのが、よいと思います。
私はトラクターなどの農業機械は今でも貸していただいていますが、
ハウスやトラクターなどは、安定的な収入を得るために必要な
ものなので、新品ですべてをそろえる必要はありませんが、
それなりの設備をととのえることが大切です。
私自身、設備にかける費用をケチって、栽培に支障がでて、もう少し
お金をかけてきちんとしたものを作っておけばよかったと後悔すること
が何度もありました。
施設や機械類にどれだけお金をかけるかというのは、さじ加減が
難しいところですが、借入金を借りてでも、安定的に収入が入って
くる体制を整えたほうがいいと思います。
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どこで就農するのか。
これはとても大切なことです。
場所を決める際にいくつか考える要素があると思います。
① 親族や両親が身近にいる。
② 自分が作りたい作物の生産に適している。
③ その場所や地域が自分の価値観・ライフスタイルに合っている。
④ 新規就農者の受け入れ体制が整っている。
まず、①についてですが、私は広島出身なのに福岡の筑後市で
就農してしまいました。当時は、何も考えずに就農できるなら
どこでもいいかなと、安易に考えていましたが、いざ、就農して
みると、大変でした。
特に子供が生まれたばかりでしたので、仕事が忙しい時期に子供が
熱を出したりすると、両親が近くにいて少しの間だけでも子供をみて
くれたら・・。と思うこともなんどもありました。
また、子供が寝ている間にと早朝に苺の収穫に行って帰ってみると
子供が起きだして玄関で泣きながら待っていた。というようなことも
ありました。
また、将来的に両親が歳をとって、健康に不安を訴えるようになった
ときに遠くに離れていると頻繁に会いに行くこともできませんし、
呼び寄せて一緒に暮らすということも考えなくてはならない時が
くるかもしれません。
あげるときりがありませんが、両親や親族が身近にいるということは
農業をするうえで大きな力となってくれるはずです。
②の作りたい作物についてですが、私の場合、はじめから苺が作りたい!
と思って就農したというより、価格が安定している、ハウスの初期投資が
少なくて済む、就農後すぐにある程度の収入が見込めるといった理由で
苺を選びました。
作りたい作物がはっきりと決まっている方なら、その作物が有名な産地を
調べてそこから就農する場所を考えてもいいと思います。その作物の
産地であるということはその品目を生産販売するうえで有利な地域である
ともいえるからです。
③について特に私が思うのは、その地域や場所に溶け込んでこそ、農業
という職業はやっていけるということです。農業が盛んな地域は昔から
の行事などが残っていて、隣組単位でお宮や公民館の掃除をしたり、
いろいろ参加しなければならないことがあったりします。そういう隣近所
との密接なお付き合いは、慣れていない方にはしんどく感じることがある
かもしれません。
また、海や山の自然に囲まれたところが好きな方なら、田舎で交通の便が
悪いところでも気にならないかもしれませんが、そうでない方もいると
思います。自分の価値観やライフスタイルをふまえて考えることも大切です。
④筑後市では市役所の農政課が窓口となって、行政と農業改良普及
センター(県の機関)とJAとで新規就農者の受け入れに対応しています。
新規就農者の受け入れに熱心であるかどうかは地域によってかなり温度差が
ありますが、その地域で新規就農者の成功事例がたくさんあれば、受け入れ
体制が整っているという目安になると思います。
以上①から④の要素を総合的に考えて自分にあった場所をさがすと
良いと思います。
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自分のことについてすこしお話したいと思います。
実は、広島出身の私。
両親も広島生まれで、サラリーマンの家庭に育ちました。
そういう環境もあって大人になって初めて農業という
職業に触れたときに新鮮に感じたのかもしれません。
高校まで広島で過ごし、福岡の大学へ進学。
卒業後はその大学を運営する学校法人の事務職として
働きはじめ、6年間勤めた後、就農しました。
就職して4年ほどするとサラリーマンが向いてないのでは
と思うようになり、福岡市で開校されていた就農準備校
に入校し、1年間、週末を利用して同校へ通いました。
その後、縁あって筑後市の苺農家の方と知り合い、それが
きっかけとなって筑後市で就農し、現在に至っています。
(このあたりの詳しい経緯は以前読売新聞の方が取材に
こられて、記事にまとめてくださったので、興味のある方は
探してみてください。顔写真もばっちり載ってます。
読売新聞2009年3月9日福岡版です。)
農業がどうしてもしたいというよりも、サラリーマンが
向いていないと思うようになって農業に転職したという
感じでしたが、仕事内容全体を自分で把握して、自分で
計画して実行できるという面で農業は自分に合っていた
ように思います。
また、広島出身の私はまったく身寄りのないところで
就農したわけですが、いろいろな面で大変なので、
あまりお勧めしません。
自分のことばかりだらだら書いても参考にならないと
思いますので、今回はこの辺で終わりにしたいと思います。
次回、その2では、就農する際に具体的に
参考になる内容についてお話したいと思います。
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先日、筑後市新規就農者の集いに参加しました。
筑後市で新規就農を希望する方と行政・JA・先輩農家たちが
意見交換をするという会で、私は新規就農した先輩農家という
立場で参加させてもらいました。
私も新規就農して10年以上が経ち、ときどき、非農家の方で
農業を始めたいという方から話を聞かせてほしいといわれることが
あります。
そこで、新規就農についてこれから数回にわたりブログに
アップしてみようと思います。(参考になるとよいのですが・・)
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